Keith Jarrett / The Köln Concert
「天才ピアニスト」と称されるキース・ジャレット、彼の伝説的なソロピアノコンサートの模様を収めた1枚がこちら。
1972年ドイツのケルンで演奏・録音されたいわゆるライブ盤です。
なぜこちらのコンサートが伝説となっているのか?
楽曲の解説の前にこのコンサートにまつわる逸話から紹介していこうと思います。
コンサート当日、本来ジャレットが弾くはずだった最上位モデルのピアノではなく、小ぶりでコンディションの悪いピアノが準備されることになってしまいます。
このトラブルに加え、もともとジャレットも体調が優れなかったためコンサートを中止の方向に向かっていました。
ですが、懸命なピアノの調整や周囲の説得もあり、万全とは言えない状態ながらもコンサートは予定通り開催されることになりました。
そこで生まれたのがこの歴史的名演なのです。
ジャレットの演奏はいわゆる即興演奏、トラブルに巻き込まれながらも奇跡的に生み出されたジャレットによるケルンでの名演は伝説として残ることになったのです。
1. Part I
このアルバムの楽曲のタイトルは非常に簡素なもので、Part I〜Part IIa・b・cという味気ないものになっています。
これは即興演奏であるためこのようなタイトルづけになっているのだと思われます。
このPart Iは実に25分を超える即興演奏で、1曲の中に起承転結・喜怒哀楽のようなものが敷き詰められた素晴らしい演奏になっています。
これが即興演奏だなんて、にわかに信じられないほどにひとつの楽曲として完成され過ぎています。
静かに美しい旋律から始まり、徐々にグルーブ感を増していき、儚く憂いを帯びながら心に深く突き刺さってくる演奏は天にも昇るかのような神々しさで幕を閉じます。
言葉で表現するのはあまりに難解ですが、とてつもなく素晴らしい演奏なのは間違いありません。
是非このPart Iだけでも聴いてほしいくらいに、あまりに美しく感動的な1曲です。
2. Part II-a
1.が静の美しさなら、2.は動の美しさを持った演奏と言えます。
リズミカルなテンポで繰り出される音の連鎖は、これまた即興演奏とは思えないような進行を見せます。
「どこでどのような展開になるのか?」が全く予測できないのですが、とても自然に、そして美しく楽曲は進んでいきます。
こちらも15分近い演奏となっており、中盤から転調し緊張感が高まるあたりからがこの楽曲の最高の聴きどころです。
3. Part II-b
激しいタッチで進んでいく演奏で、このアルバムの中の楽曲で最もグルーブ感をまとったエキサイティングな1曲と言えるでしょう。
もちろん即興演奏のこちらも18分を超える長作となっています。
混沌を感じさせるようなこの演奏の後に、再び情感たっぷりな4.へとつながり、本作を締め括るという流れも完璧です。
4. Part II-c
1.の美しい演奏に負けず劣らずの美しく感動的なラストナンバーになります。
どうやったら一体こんな即興演奏ができるんでしょう。。
そしてピアノというひとつの楽器だけでこんなにも感動的な演奏ができるなんて。。
時折入り込んでくる心の琴線に触れるような美しいメロディーがもうたまりません。
そして演奏が終わった後の聴衆による鳴り止まない拍手がこの演奏の素晴らしさをまざまざと伝えてくれています。
まとめ
このアルバムが名盤であることは間違い無いのですが、「これは果たしてジャズか?」と問われると賛否が割れる部分かとは思います。
しかしそんなカテゴライズなんてどうでも良いくらいの素晴らしい演奏がこのアルバムには詰まっています。
万全とは言えないコンディションでのこの奇跡的な名演は、これからも多くの方の心を打つ名盤として君臨し続けるのだと思います。
ちなみにレコード盤は2枚組みとなっており、1曲が1枚の片面丸々を使い切るという豪華な収録の仕様となっています。
自分も本当に大好きな1枚でCDも持っているほどに愛聴している1枚です。
まるお