Herbie Hancock / Maiden Voyage
このアルバムは邦題を「処女航海」と呼ばれ、ジャズピアニストのハービー・ハンコックの最高傑作としてしられる名盤です。
全編を通して海がテーマのコンセプトアルバムとなっており、展開にもストーリー性がたっぷりと組み込まれていて、その完成度の高さはまさに名盤の呼び名に相応しいものになっています。
このアルバムは、ピアノのハービーをはじめ、ベースのロン・カーター、ドラムスのトニー・ウィリアムズと、あのマイルス・デイビスの「黄金クインテット」と呼ばれるメンバーで構成されておりその実力は折り紙付きです。
さらにそこにトランペットのフレディ・ハバードが参加と、これ以上ないほどの隙のないメンバー構成となっている点も大きな注目ポイントです。
アルバム全体としては特別キャッチーなものではないので、ジャズ初心者よりはややジャズを聴き込んでからの方が良さがより理解できる1枚かと思います。
いずれにしろジャズ好きなら間違いなく惚れ惚れする傑作アルバムです。
1.Maiden Voyage
オープニングから超名曲の登場です。
これから始まる航海へと出発する船出が目に浮かぶようなナンバーです。
この曲はなんといってもフレディ・ハバードのトランペットの存在感が際立っていて、ハービーのピアノは抑制が効いており決して主張することはありませんが、重要なポジションで曲全体の舵を取っています。
テナーサックス・ドラムス・ベースそれぞれの演奏も非常にクオリティが高くさすがの布陣です。
何回でも聴きたくなる素晴らしい楽曲です。
2.The Eye Of The Hurricane
「台風の目」と名付けられた2曲目。
意気揚々と航海に出た船が直撃する嵐といったところでしょうか。
ここでもフレディ・ハバードのトランペットが非常に激しい演奏で曲全体を引っ張っていきます。
ハービーのピアノもスピーディーなタッチで、曲全体を通して危機迫る雰囲気での演奏が繰り広げられます。
3.Little One
嵐が去った後、自分自身を見つめ直すかのような楽曲です。
広い大海原の前では、自分という存在はただただちっぽけな存在なんだということを伝えてくれているようです。
ややテンポを落としながらも緊張感を緩め切らない絶妙なテンションが非常に心地良いナンバーです。
ここでA面が終了となります。
4.Survival Of The Fittest
この海で生き残るための力を身につけようともがく姿を描いているかのようなこの曲でB面は始まります。
ここでもフレディ・ハバードの激しい演奏を堪能することができます。
このアルバムはハービーのアルバムでありながら、ハービー以外のメンバーも非常に目立つシーンが多くあり、コンポーザーとして柔軟に立ち回っていてここぞと言う時にキメるハービーが本当にかっこいいんですよね。
5.Dolphin Dance
こちらもTr.1と並んでジャズの色褪せない不滅の名曲のひとつです。
航海の果てにたどり着いたのはイルカたちの祝福の踊り、という解釈で良いんでしょうか?
コンセプトアルバムというものはこれが正解というものはなく、聴き手それぞれが思い描くそれぞれの解釈で良いんだと思っています。
優しく包み込んでくれるようなラストナンバーは険しかった航海のご褒美とでも言わんばかりです。
アルバム全体の流れも本当に完璧すぎます。
まとめ
「初めての航海」というコンセプト通りに、このアルバムはこれから何か新しいことを始めようとするときなどにエネルギーを与えてくれる1枚だと思います。
リーダーでありながら前に出過ぎないハービー・ハンコックが豪華メンツを率いているその佇まいがとても魅力的なアルバムでもあります。
何度聞いても聞き飽きない自分にとっても大好きな1枚です。
まるお